ズー30
マズイ事になった。まさかあんな化物サークルに入会する愚か者が現われるとは。
アパートへ帰る道は電灯に照らされているものの、頼りないほど暗い。歩きながら手の爪を噛み、何か策はないかと思案していた。さすがにこのまま黙ってはいられない。
「おばんです。どうしました、そんな暗い顔をなさって」
俯き加減に歩いていたからだろうか、すぐ横の電灯下に、男が立っている事に声をかけられた事でようやく気付いた。夜は冷えるとはいえ、紺のスーツを着ている事にまず違和感を覚える。黒ぶちの眼鏡をかけているが、その眼から発せられる不気味な眼光までは隠し切れない。
言いようの無い不安を感じた為、そのまま無視し、通り過ぎようとする。だが、後ろからかけられた甘い誘惑を無視する事までは出来なかった。
「あの化物共を、この大学から駆逐したいとは思いませんか?」
男が浮かべたのは、獲物を追い詰めた獣のような、愉悦をたたえた笑みだった。