頭痛
頭痛でもしているのか、頭を抱えて重い息をつく。
「フランクさんは五百キロくらいの物なら簡単に持ち上げられる腕力があるし、ジェスさんは百メートルを三秒で駆け抜けるくらい速いから……ケンカになったら私じゃ止められないんだよ。だから、起こる前に眠ってもらおうと、ね。頚動脈辺りを掻っ捌いてもいいなら止められるけど、そうなったらもう殺し合いだし……」
先程から、幸一の声がまったく聞こえない。どうしたのかと目線だけで幸一を見る。
……ナスのように顔が青ざめていた。
「いや……ね、フランクさんもジェスさんも、一般人にケンカ売るようなことはしないのであって、そのぉ、彼等は良きライバルなの、そう、お互い切磋琢磨するというか」
幸一の顔に、気弱そうな笑みが、ヘラッと浮かぶ。
「だ、だ、大丈夫です。し、死にはしませんよ、は、ははは。せ、先輩方だって、ぼく相手にケンカ売るほどヒマじゃないでしょうし……巻き込まれたら死ぬでしょうけど」
胸をドンと叩こうとするが、その拳が気の毒なほど震えている。
「と、ところで、生徒会室に行って、どうするんです?」
一刻も早く先程の会話から離れたいのだろう。何気なく言葉が幸一の口から出たが、マナの顔はどことなく心配そうだ。
「……ねえ、幸一君、本当にこのサークルに入っていいのかな?」
「あの……何が、でしょうか?」
真意を測りかね、尋ね返す。
「ジェスさんから聞いているだろうけど……私達への風当りは中々強いよ。もちろん、偏見でこりかたまっている人ばかりじゃないけど……君も、大学生活に支障が出ないとは限らない……本当に良いの?」
質問に幸一は、ゆっくりと落ち着いた口調で答えた。
「大丈夫です。支障があったら、その時はその時……ジェスさんやフランクさんのケンカの方が、ぼくにとってはよっぽど怖いです」
マナがこの二日で見てきた彼の表情の中で、もっとも穏やかな笑み。