喚起
次いで、ロザリアが乾いた笑い声を発した。ジェスは『部屋の喚起をせねば』と言いつつ、すでに開けている窓に歩み寄る。フランクは気まずそうに彼から眼を逸らした。マナはわざとらしく咳払い。
「え、えっと、その、ごめん。自己紹介をお願い」
彼はパイプ椅子から立ち上がると、斜め四十五度にお辞儀。コチコチに固まった姿勢で論文の発表をするかのように天井に向かって声をあげる。
「きょ、教育学部社会科B類、一年の鈴木幸一です。趣味は……えと、音楽鑑賞です。つい先日までスイスにいました」
これにはジェスがほう、と声をあげた。
「旅行で行ってたのかね?」
「い、いえ。住んでいました。入学が遅れたのは、その、諸々の手続きが遅れたからで……」
モゴモゴと口ごもる幸一に対し、フランクは納得したように小声で独白。
「なるほど。それでサオリの時は来なかったのか」
「あの……サオリってなんですか?」
「サークルオリエンテーションの略称だよ。簡単に言えば、サークルの紹介」
「でも、幸一君、その割には日本語上手だよね?」
「昔は日本に住んでたんです。見ての通り日本人なんで。向こうでも日本人の知り合いはいましたから、使う機会もありましたし」
説明に皆、何故かへぇ〜と、感嘆。
「しかし、教育学部社会科B類ならば、マナ君の後輩という事になるのかな?」