公平
話が見えない幸一は黙ってその先を聞く。
「つまり、公平な評価をしているとは思えんのだよ、オレには。腫れ物を扱うように、ご機嫌を伺うように『優』をくれる」
しかし、とフランクは続けた。
「この倫理学は別だ。オレとジェスは落ちたが、マナは一発で単位を取った。あとレオ先輩という、ライオンの頭部をした人もいたんだが、その人も一回で単位を取得している。つまり、この事から七割落としの長谷部だけは、一応、公平な視点で単位を与えている事が考えられる訳だ」
奴にどのような基準があるのかはさっぱりわからんが、と付け加える。
「血と、汗と、涙と、努力の結晶。中々良いものだとは思わねえか?」
正直幸一には思えない。自分ならジェスのように二年目からは他の単位の取得を狙う。
しかし、周りから腫れ物のように扱われ、あるいはその容姿だけで敬遠されてきたフランクには、公平な評価を与えてくれる存在というものに対しては、全力を挙げて応えたい存在なのだろう。
「あ、話は変わるが今日の午後七時にS棟前に集合な」
「え? 何するんですか?」
「ゴミ拾いだよ。お? 長谷部がきやがった。お喋りはここまでだ、詳しい話は後でな。お互い、頑張ろうぜ」
そう言うとフランクはすでにペンケースから出していたシャープペンを握る。彼がシャープペンを握ると、待ち針を持っているかのような錯覚を与えてしまう。
色々大変だなと、幸一はその異形を横目で見やった。