長谷部
「おい、起きろ、起きるんだよ! あと数分で長谷部が来るぞ!」
ガクガクとゆさぶられた幸一は、眼を覚ますと同時に『ヒエェ!』短い悲鳴を発した。
「おい! そんな青ざめた顔すんな。オレだ、フランクだ。悪夢じゃねえからな!」
「は、は、はい……」
マリンブルー色に染まった顔を縦に上下させつつ、フランクは彼の恐怖を紛らわせないだろいうかと思案。
「そう言えば……コウイチ、オメェはどうして倫理学取ったんだ?」
「え? あ、ぼ、僕は、入学手続きが遅れたせいで、自動的にこの授業に組み込まれたんです、は、はい」
そう言われたフランクは大きく頷く。倫理学は七割もの受講者が落とされるだけではなく、遺伝子操作兵の中でももっとも凶悪な顔をしているフランクが受講しているという事実もあってか、大志田大学で『もっとも受けたくない授業?1』の座を三年連続で射止めているスゴイ講義である。この周りにいる一年生達は、他の講義から溢れた学生、もとい哀れな犠牲者なのである。
「でも、フランクさん、どうしてそんな取りにくい単位、取ろうとするんです? この講義は共通教育科目ですから、代替えの単位はいくらでもあるでしょう?」
いくら納得出来ないと言っても、それだけでここまで固執するものだろうか?
「……オレの受講した授業は、ほとんど『優』―ってわかるか? テストや授業態度から、八割以上の点数を取得した学生に送られる単位だ。七十なら『良』、六十で『可』、それ以下なら不可だ―なんだが、まあとにかくオレは、ほとんど『優』を取っているんだ。中にはどう考えても、六十点を切っているテストもあったんだが」