倫理学
「オメェもこの単位が取りにくい事で有名な倫理学取っていたとはな。中々見所があるぞ!」
ガハハハと笑いながらフランクは幸一の背中をドンドンと叩く。幸一はその巨大な手に背を叩かれ、むせ込みながらも質問した。
「あの……この倫理学って、そんなに合格しにくいものなんですか?」
サイの顔が、幸一を真っ正面から睨み付ける。本人は睨み付けている自覚はないのだろうが。
「おうよっ! なんて言ったって七割落としの長谷部だ! その名の通り七割が落ちる。……って、どうした?」
巨大な口は、幸一の頭程度ならば一飲みにできそうな程大きい。牙の太さときたら、常人の腕よりも太そうだ。彼がほんの少し動くだけでL教室に備え付けられている木製の椅子がミシミシと耳障りな音をたてている。
「お、おいっ! 白目剥くな! 気絶すんな! もうすぐ授業だぞおいっ!」
壊れ物を扱うように細心の注意を払ってフランクは泡を吹き出しかけていた幸一の肩を揺する。
「あっ……す、すいません……ちょっと意識が飛びかけました」
「頼むぞ……一々気絶されたら、オレもたまったもんじゃねえ。まあ可能な限り親しみ易い顔は作ってみるが」
そう言うとフランクは口をパックリと開け、細い両目を更に細めた。……どうも笑っているつもりらしいが、幸一には獲物を求める二足歩行のサイにしか見えない。