意識
「時々、意識が飛びそうになりますもんね」
「あの……」
「ロザリアちゃんまで……そんな」
「まで、じゃないですぅ。私達は事実を言っているに過ぎません」
「そうだな。まで、じゃなく、むしろ当然だな」
「たまには、自分の味覚を疑ってはどうかな。世界は君を中心に回ってはいない」
「……ええっと」
「むしろ当然、自分の味覚を疑えだなんて……ねえ、君はどう思う?」
今まで何度か気弱そうに声をかけてきた彼だったが、突然話の鉾先を向けられる。
「やめておいた方がいいよぉ。あれは激辛料理という範疇には収まらないと思う」
「劇物料理だな、どちらかと言うと」
「これは新手の毒殺なんじゃないのかと疑う程に」
「ひ、ヒドイ! 毒殺とか劇物だなんて! 私の料理はそんなにヒドイですか!」
そのまま四人はああでもないこうでもないと言い合いを続ける。
「……あのー……」
彼の顔は、頬の辺りがやや緩いので苦笑といえばいいのか、もしくは眉間にシワを刻んでいるので怒りの形相と言えばいいのか、オドオドしているので困惑しているのか……とにかく、実に複雑な表情だ。だが、この状況を客観的に見れば、彼が言いたい事は簡単に推理出来る。
顔を伏せたまま、そぉっと挙げられた手。八つの眼が彼を捉える。
「……ぼくの自己紹介は、いらないんでしょうか?」
ボソリと呟かれたその一言が、サークル室を極寒の地へと叩き込んだ。